この記事では、1954年3月31日に公開された映画『山椒大夫』のあらすじ(ネタばれナシ)・みどころ・解説・感想をご紹介します。
映画『山椒大夫』の予告編
平安期に筑紫の地に追放されて音信不通になった父を母と共に安寿と厨子王らは探しに行く。しかし途中で、人買いに襲われてしまい、母と離れてしまった安寿と厨子王。
安寿と厨子王は、山椒大夫という人買いに買われてしまい、日々厳しい労働をさせられてしまいます。父そして母とも別れてしまった安寿と厨子王。
やがて2人に更なる厳しい運命が待ち受けていました。
映画『山椒大夫』のあらすじ(ネタバレなし)
平安時代の末期ごろ。平正氏は百姓の困窮ぶりを見かねて鎮守府将軍に領民への行為を是正するように助言を行います。しかしこのことで平正氏は、九州の筑紫に追われてします。
妻、そして子である安寿と厨子王は再会を願う日々を送っていました。しかし、長年に渡り平正氏との再会が果たせなかったため、妻は子たちを連れ、再会するための旅に出発します。
しかし旅路は険しく、旅先で人買いが横行していたため見知らぬ人に宿を貸さない場所に行きつき、泊まる場所がなくなってしまいます。
そこへ巫女と称する女性が接近してきて一夜の宿を貸して、旅路のための船を用意してくれました。
しかしその船は母たちだけを乗せ、安寿と厨子王は人買いである山椒大夫の元に連れていかれてしまいます。山椒大夫の元で強制的な労働を強いられる安寿と厨子王。
このままでは、山椒大夫の元から逃れられないと考えた安寿は、厨子王だけでも逃げられないかと考えます。
映画『山椒大夫』のみどころ
父である平正氏から、幼少期の厨子王に形見を渡したうえで人は身分の差に関係なくすべて等しく幸せになれると教える場面は最初の見どころです。
厨子王の今後の生き方の基本的な姿勢になった場面です。
また親切な巫女だと思い気を許していたら裏切られ母から安寿と厨子王は離れ離れになってしまいます。その後、山椒大夫に引き渡されるシーンは見どころです。
広々とした邸宅で多くの家人を使用している山椒大夫。下座に座って不安げな安寿と厨子王に今後の苦難が待ち受けていることを暗示させる象徴的な場面が印象的です。
そして、佐渡から山椒大夫の元に連れておられた女性の歌を聞いた安寿が、人生に絶望しかけていた厨子王を勇気づけ、逃げ出す決意をさせる場面です。
追っ手から身をもって防ぎ厨子王だけでも逃がそうとします。しかも安寿は自分は逃げ切れないと考えて自らの生命を断ってしまう、つらいシーンは見どころです。
映画『山椒大夫』の解説
山椒大夫は、森鴎外が原作の映画です。この山椒大夫の話は平安時代ころからの伝えられた伝承を題材にしています。
当時、治安は不安定であり領主たちの領民に対して行き過ぎた行為をとることが多かったと言われています。
江戸時代には話の基礎が出来上がり、山椒大夫という人物は、丹後地区の豪族となっており多くの家人などを酷使した人物という設定です。
1954年公開の映画で配給が大映です。映画は白黒で、主演は日本映画界を代表する女優である田中絹代です。日本映画界では国際的にも評価の高い、溝口健二が監督をしています。
映画山椒大夫の撮影技術は当時としては世界的に評価が高い作品であり1954年に開催されたヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した作品でもあります。
映画『山椒大夫』の感想
厨子王と安寿は、共に父に会いたいという思いから母たちと共に旅に出て、人生が思わぬ形で変化していく物語と感じました。
平安時代の話でもあり今の私たちでは考えられないことが平気で通用していたからこそ起きた劇的な話だと感じました。
映画『山椒大夫』の登場人物・キャスト
映画『山椒大夫』の登場人物・キャストを紹介します。
玉木:田中絹代
厨子王:花柳喜章
安寿:香川京子
山椒大夫:進藤英太郎
仁王:菅井一郎
吉次:見明凡太郎
小萩:小園蓉子
姥竹:浪花千栄子
巫女:毛利菊江
映画『山椒大夫』のスタッフ
映画『山椒大夫』のスタッフを紹介します。
監督:溝口健二
原作:森鴎外
脚本:八尋不二,依田義賢
製作:永田雅一
音楽:早坂文雄
撮影:宮川一夫
編集:宮田味津三