映画『雨月物語』あらすじ(ネタばれナシ)・みどころ・解説・感想

邦画

1953年3月26日公開の映画『雨月物語』のあらすじ(ネタばれナシ)・みどころ・解説・感想を紹介します。

映画『雨月物語』の予告編

第13回ヴェネツィア国際映画祭、銀獅子賞受賞作品。上田秋成の読本「雨月物語」に収められた2編に、モーパッサンの「勲章」を加え、二人の脚本家が脚色した奥深く幽玄な映像美と、戦争と欲望に翻弄された人々を描いたモノクロ作品です。

海外でも映画史上の最高傑作と高い評価を受けており、溝口健二監督の代表作品の一つとなっています。

映画『雨月物語』のあらすじ(ネタバレなし)

近江の貧濃の源十郎は、畑仕事の合間に焼き物を自作し、街で売っていたところ、賤ヶ岳の戦いを前にして長浜を羽柴秀吉が占拠し羽振り良く町が賑わっており、思わぬもうけを得ていました。

義弟の藤兵衛は侍になりたいと、源十郎に同行していましたが、鼻も引っかけられません。

柴田勝家の軍勢に襲われ逃げた源十郎親子と藤兵衛夫婦はそれぞれ離散し、源十郎は行商の途中で、信長に滅ぼされた朽木氏の奥女中の怨霊に取り憑かれて危うく死にかかり、妻の宮木は村へ引き返す途中に落ち武者に刺殺されていました。

一方藤兵衛は、落ちのびた先で切腹した敵方の大将の首をまんまとおのが手柄にして褒美を得て一躍出世して凱旋するも、遊女に身を落としていた妻阿浜と出会い、戦意喪失して出奔してしまいます。

村に這う這うの体で帰宅した源十郎を迎えたのは、今は亡き妻宮木の姿でした。

映画『雨月物語』の解説

戦後の記憶もまださめやらぬ頃に、この名作は撮影されました。

当時の海外の目から見れば、敗戦国日本の昔の時代における貧しい生活と対比した、幽玄な幻想的な文化の歴史と、痛快な戦に置ける立身出世の愚かしさを痛烈に描き、欧米人にも理解しやすい内容になっています。

この時代、どのような偏見の目を向けられようとも、はねのけられるくらい芸術的な価値のある作品でした。

主演の一人である京マチ子は、現代のコミカルなイメージと大きく違い、この時代では美人女優で数々の名作に出演していたことに驚きを感じてしまうほどの美しさです。

日本お映画史上に残る名女優、田中絹代の演技も注目です。

映画『雨月物語』のみどころ

主人公である源十郎が、村の自宅に窯を設け、焼き物を熱心に焼いているシーンが、日本人の目から見ても独特な民族的な興味をそそるシーンが興味を引く作品です。

その焼き物が、戦景気でにぎわう町で飛ぶように売れる面白さに反し、一転夢のように美しい高貴な女性が立ち止まって焼き物を注文するシーンなど、現代では見られないようなリアルさを感じるシーンも印象的です。

義弟藤兵衛の棚から牡丹餅のような立身出世ストーリーも痛快ながら、見にそぐわぬ欲望の愚かしさとバカバカしさは世界共通です。

終盤の幽霊となった妻との切ない物語には、決して取り返しがつかない戦さの哀しさが語られています。

映画『雨月物語』の感想

こんなに面白くも哀しい映画は未だかつて見たことがないと、今でも深く心に残るような映画でした。

古い時代の古い知識が豊富なスタッフが製作しているだけあり、商売で小銭を稼ぐ農民の源十郎の側に立ち止まって佇む、上品な奥方の怨霊の描き方は、現代では描き出せないくらいのリアルさがありました。

モノクロだからでしょうか…。結末も救いがありそうに見えて、ひたすら無念というか絶望しかないはずなのに、どこか明るい哀しさに満ちているのは、まさに戦後復興の時代の象徴だからでしょうか。

映画『雨月物語』の登場人物・キャスト

映画『雨月物語』の登場人物・キャストを紹介します。

若狭(朽木氏の奥女中):京マチ子
阿濱(藤兵衛の妻):水戸光子
宮木(源十郎の妻):田中絹代
源十郎(主人公):森雅之
藤兵衛(愚弟):小沢栄

映画『雨月物語』のスタッフ

映画『雨月物語』のスタッフを紹介します。

監督:溝口健二
製作:永田雅一
企画:辻久一
原作:上田秋成「雨月物語」収録「浅茅が宿」「蛇性の婬」の2編、モーパッサン「勲章」
脚本:川口松太郎、依田義賢
風俗考証:甲斐庄楠音
撮影:宮川一夫