映画『野菊の如き君なりき』あらすじ・みどころ・解説・感想

邦画

この記事では、1955年(昭和30年)11月29日公開された映画『野菊の如き君なりき』のあらすじ(ネタばれナシ)・みどころ・解説・感想をご紹介します。

映画『野菊の如き君なりき』の予告編

故郷である信州を何十年かぶりに訪れた一人の老人の回想という形で描かれる、少年と年上のいとこの儚くも美しい、そして悲しい恋の物語です。

信州の美しい自然と主人公を演じる二人の初々しい演技が相乗効果を生み、わたしたちの涙を誘う名作が生まれました。

原作は伊藤左千夫さんの小説「野菊の墓」。後年何度かリメイクされて映画化されていますが、やはりこの木下恵介監督作品がダントツだと思います。

映画『野菊の如き君なりき』のあらすじ(ネタバレなし)

信州のとある村の旧家の次男として育った政夫。彼は近くの家から手伝いに来ていた、母の姪にあたる民子とは幼い頃から仲良しでした。

やがて、お互いに淡い恋心を抱くようになりますが、それをよく思わない周囲の大人たちもいます。その結果残酷な運命により二人の中は裂かれてしまいます。

無理やり学校の寮に入れられた政夫は冬休みに実家へ帰りますが、迎えに来るはずの民子はついに姿を見せませんでした。政夫の落胆ぶりは推して知るべしでしょう。

その後民子は政夫への思いを断ち切るかのように他家へ嫁いで行きます。ただ一人、祖母だけが民子を憐れんだのでした。そして学校へ戻ってしばらくした頃、政夫の元へ一通の電報が舞い込みます。その内容は…。

映画『野菊の如き君なりき』の解説

元々リリシズムあふれる作風が特徴である木下恵介監督の筆致はこの作品にも遺憾なく発揮されています。

老人が過ぎ去った昔を回想するシーンでは、その場面を白地の楕円形で囲って、まるでセピア色の古い写真帖をめくるような実験的な手法を効果的に使っています。

この手法と美しい信州の風景、詩情あふれる映像などが相まって、涙を誘うのでしょう。

男女の仲を無理やり引き裂くという行為は理不尽にも思えますが、原作が書かれたのは明治39年ですから、どんなに愛し合っていても自由な恋愛などはできなかった時代なのでしょう。

そう言った時代背景を踏まえつつ観る必要があると思います。

映画『野菊の如き君なりき』のみどころ

冒頭の老人が回想を始めるシーンから、すでに涙腺が刺激されてきました。泣くまいと思ってもなぜか涙が溢れそうになります。

お互いに好意を持ちながらも、理不尽な仕打ちにより中を割かれなければならなかった若い恋人たちの悲しみ、そして切なさが感情の起伏を抑えた静かな語り口の中に感じ取れます。

物語を盛り上げる俳優陣も豪華です。笠智衆さん、田村高廣さん、杉村春子さんなど日本映画界の至宝とでもいうべき方々の演技も見所です。特にラストシーンの笠智衆さんの姿には号泣してしまいます。

小津安二郎監督の作品や「男はつらいよシリーズ」も含めて、笠智衆さんという俳優は日本映画界の宝物だと改めて実感しました。

映画『野菊の如き君なりき』の感想

信州の美しい風景、美しい音楽、そしてセピア色の思い出。涙無くしては観れない悲しいストーリーではあるものの、観終わった後にはなんとも言えない清涼感のようなものが残ります。

また、人によっては観づらいと感じるあの白い楕円形の画面、私はこれが大好きです。さらに大女優・杉村春子さんの演技はまさに”神”の領域。

日本の映画界を牽引してきたいい俳優さんがだんだん少なくなったことは残念に思います。

映画『野菊の如き君なりき』の登場人物・キャスト

映画の登場人物・キャストを紹介します。
政夫:田中晋二
民子:有田紀子
老人:笠智衆
栄造:田村高廣
政夫の母:杉村春子

映画『野菊の如き君なりき』のスタッフ

映画のスタッフを紹介します。
監督・脚色:木下恵介
原作:伊藤左千夫
撮影:楠田浩之
音楽:木下忠司