この記事では、1949年9月13日に公開された映画『晩春』のあらすじ(ネタばれナシ)・みどころ・解説・感想をご紹介します。
映画『晩春』の予告編
昭和を代表する名監督・小津安二郎さんが、女優の原節子さんと初めてタッグを組んで挑んだホームドラマです。
このホームドラマの成功によって、後の小津作品のスタイルが決定したとも言われています。
また、ヒロインを務めた原節子さんの「紀子三部作」の初めを代表する映画としても有名です。結婚をテーマに、父娘の絆を描いた名作映画となっています。
映画『晩春』のあらすじ(ネタバレなし)
大学で教授をしている曾宮周吉は、娘の紀子と二人暮しをしていました。年頃の紀子は、戦争で体調不良になってしまったこともあり、未だに独身を貫いていました。
そのため、周吉はそんな紀子を心配しているのでした。しかし、一方の紀子は、友達と仲良く遊びながらも父との生活を楽しんでいて、嫁に行く気など全くない様子。
というのも、紀子は自分が嫁いでしまったら、父が1人になってしまうことを心配し、せっかくの見合い話まで断ろうとしていたのです。
娘の想いに気づいた周吉は、自分も再婚をすると紀子に伝えるのですが、逆に父娘の関係はギクシャクしてしまい……..。
映画『晩春』の解説
この映画の原作は、作家である広津和郎さんが書いた小説「父と娘」です。
それまでも小津安二郎監督は、ホームドラマを数多く手がけていましたが、このような淡々とした日常の中で父と娘の関係を描いたのは、今作が初めてとなっています。
この温かみのある感動ドラマは、当時の国民の心を打ち、1949年度の「キネマ旬報ベスト・テン」で、日本映画部門の第1位を取得しました。
当時は今と違っていて、誰もが結婚をする時代で、嫁ぎ先まで探すのが親の仕事だったからこそ、自分の家族に重ねながら、父娘の行く末を見る方が多かったようです。
映画『晩春』のみどころ
なんといっても見どころは、大女優の原節子さんによる演技です。今の人から見ても、充分に美しいということが一目で分かります。
また、美しいだけでなく、演技の仕草や言葉使いに丁寧さが感じられてとても上品です。彼女の能のシーンは、特に魅了されると思うので必見です。
モノクロ映画の暗さと能が、日本映画の良さを引き出しているようにも見えました。また、娘を想う父の気持ちも、映画の中ではとても良く表されています。
父の感情も最初と最後では変わってくるので、ラストシーンは特に必見です。嫁入り前の娘と一緒に見たくなる映画になっています。
映画『晩春』の感想
芸術作品を見ているような気分で楽しめました。日本の文化も映画の中に散りばめられていて面白かったです。また、今とは結婚に対する価値観が違うからこそ、余計に面白く感じました。
昭和のお父さんと娘の関係性がよく現れていて、家族について考えさせられる秀逸な映画だったと思います。
映画『晩春』の登場人物・キャスト
映画の登場人物・キャストを紹介します。
曾宮周吉:笠智衆
曾宮紀子:原節子
北川アヤ:月丘雪路
田口まさ:杉村春子(文学座)
勝義:青木放屁
映画『晩春』のスタッフ
映画のスタッフを紹介します。
監督:小津安二郎
原作:広津和郎
脚本:野田高梧、小津安二郎
撮影:原田雄春