【映画ファン必見】サスペンス映画の傑作『第三の男』を徹底解説|あらすじ・キャスト・名シーン・音楽の魅力まで

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オーソン・ウェルズの怪演と戦後ウィーンの陰影美で映画史に燦然と輝く名作『第三の男』。サスペンス映画としてはもちろん、映像美・音楽・脚本すべてにおいて今なお高い評価を受けるこの作品は、なぜこれほどまでに人々を惹きつけるのでしょうか?

本記事では、『第三の男』のあらすじから主要キャスト、印象的な名シーン、チターによる音楽の魅力、さらにはテーマ性や映像手法までを丁寧に解説します。初めて観る方も、何度も鑑賞している方も、新たな発見がきっとあるはずです。

映画『第三の男』とは?基本情報と見どころ

  • 公開年:1949年
  • 監督:キャロル・リード
  • 脚本:グレアム・グリーン
  • 主演:ジョセフ・コットン、オーソン・ウェルズ
  • 音楽:アントン・カラス(チター)

『第三の男』は、英国とハリウッドの合作によって生まれたサスペンス映画の金字塔です。第二次大戦後の荒廃したウィーンを舞台に、陰影に富んだ映像と音楽が高く評価され、カンヌ国際映画祭グランプリを受賞。今もなお映画ファンに愛され続けています。

あらすじ:戦後ウィーンで始まる謎解き

アメリカ人作家ホリー・マーチンスは、旧友ハリー・ライムの招待を受けてウィーンへ。しかし到着直後、ハリーが交通事故で死亡したことを知らされます。葬儀に出席したマーチンスは、友人の死に不審な点があると感じ、真相を探ることになります。

混乱の続く占領下ウィーンで展開される調査の中で、マーチンスは驚くべき事実に直面します。ハリーは本当に死んだのか?なぜ誰もが「第三の男」の存在を口にしたがらないのか?

キャスト紹介:印象に残る俳優たち

ジョセフ・コットン(ホリー・マーチンス)

正義感と友情のはざまで揺れる主人公を演じたのは、ハリウッドで活躍した名優ジョセフ・コットン。視聴者と同じ視点で物語の真相に迫っていく彼の姿は、サスペンスの緊張感をよりリアルに感じさせます。

オーソン・ウェルズ(ハリー・ライム)

『市民ケーン』で知られる映画界の巨匠ウェルズが演じるハリー・ライムは、登場シーンこそ短いものの、観客に圧倒的な印象を残します。不気味な笑み、巧妙な言葉、そして闇に浮かび上がるシルエット──名優ならではの存在感が光ります。

名シーンと演出:なぜ心に残るのか?

1. ハリー・ライムの初登場

猫の足音に誘われて姿を現すハリー・ライム。街灯が彼の顔を浮かび上がらせるこのシーンは、映画史に残る名場面の一つ。光と影の演出がキャラクターの不気味さを際立たせています。

2. 観覧車での名セリフ

「ボルジア家の30年の統治は戦争と流血に満ちていたが、ルネサンスを生んだ。」

このセリフはウェルズによる即興とも言われており、倫理観と皮肉が交差する哲学的な響きを持ちます。ハリー・ライムの人物像を象徴する重要なセリフです。

3. 門番の子どもが叫ぶ「人殺し!」

子どもに追い立てられるマーチンス。善と悪の境界が曖昧になる中で、子どもの一言が鋭く物語を突き刺します。このカフカ的な演出は観客の心に強烈な印象を残します。

4. 並木道のラストシーン

ラスト、マーチンスがアンナを待つ並木道で、彼女は無言で通り過ぎていく──。

この無音の時間と視線の交錯が、愛と決別、情と理の間にある人間の本質を静かに描き出します。

音楽の魅力:チターが生み出す緊張感

アントン・カラスと『ハリー・ライムのテーマ』

映画の全編にわたり流れるのが、アントン・カラスによるチターの音楽。特に有名なのが『ハリー・ライムのテーマ』で、軽やかでありながら不穏な空気を醸し出します。

このユニークな音楽が、映像の光と影に絶妙なコントラストを与え、映画全体の世界観を形作っています。

映像と音楽の相乗効果

暗い路地、斜めの構図、モノクロのコントラスト──そこにチターの旋律が重なることで、視覚と聴覚の両面から観客を作品世界に引き込みます。まさに、音と映像のシナジーによって生まれた芸術です。

『第三の男』が描く普遍的なテーマ

友情と裏切り

親友だと思っていた人物が、実は犯罪に手を染めていた──。マーチンスが感じる動揺と葛藤は、観客にも「信頼とは何か」を問いかけます。

倫理と愛の狭間で揺れる人々

アンナは、ハリーが犯罪者だと知っていながらも彼を愛し続けます。正しさよりも情を選ぶ彼女の姿に、単純な善悪では測れない人間の複雑さが浮き彫りになります。

戦後の混乱が生んだモラルの崩壊

荒廃した都市、分割占領という特殊な状況の中で、モラルは揺らぎ、正義は曖昧になります。その背景があるからこそ、登場人物たちの選択には説得力があるのです。

まとめ:『第三の男』はなぜ今も語り継がれるのか

『第三の男』は、サスペンス映画でありながら、芸術性・映像表現・哲学的テーマを兼ね備えた稀有な作品です。

  • 映像:光と影が織りなすモノクロの美
  • 音楽:チターの旋律が創る緊張感
  • 演技:オーソン・ウェルズの圧倒的存在感
  • 脚本:友情と倫理が交錯する深いストーリー

1949年の公開から70年以上が経った今も、観るたびに新しい発見と感動を与えてくれる映画。それが『第三の男』の最大の魅力です。

よくある質問(Q&A)

Q. 『第三の男』はどこで視聴できますか?

A. 現在はAmazon Prime、U-NEXT、Huluなど複数の動画配信サービスで視聴可能です(時期により異なるため、要確認)。

Q. 映画に登場する「第三の男」とは誰ですか?

A. 物語の鍵を握る存在で、ハリーの死に関する証言に登場する“もう一人の男”を指します。正体と登場は物語後半の最大の見どころです。

Q. チターとは何ですか?

A. オーストリアなどで伝統的に使われる弦楽器。独特の音色で『第三の男』の音楽に使用され、有名になりました。