この記事では、1958年6月1日に公開された映画『楢山節考(ならやまぶしこう)』のあらすじ(ネタばれナシ)・みどころ・解説・感想をご紹介します。
映画『楢山節考(ならやまぶしこう)』の予告編
山村に住む69歳の女性のおりん。極めて貧しい村で過ごすおりんは村の厳しい掟に従う時期を迎えつつあります。
この村では70歳を迎えた時点で村民が暮らしていけるために、村を去り山に行き口減らしを行わなければいけない厳しい規律があります。
おりんは、来年には70歳になり、その掟に逆らうことなく自分の運命を受け入れる覚悟です。やがて時が経ち、息子たちと別れの時が近づいてきました。
映画『楢山節考(ならやまぶしこう)』のあらすじ(ネタバレなし)
貧しい暮らしをしているある村に暮らす69歳のおりん。おりんは、息子の辰平そして孫のけさ吉たちとひっそりと過ごしていました。
この貧しい村には過酷な掟があり、70歳になる時に村を去り山に行かねばならないという決まりがありました。いわゆる口減らしです。
おりんは、この運命を静かに受け入れる決意でいたが、村を去るにあたり、心残りがありました。それは息子である辰平の嫁がこの世を去り、なんとか再婚相手を見つけてやりたいと考えていたことです。
おりんの願いが通じて、ついに辰平に再婚相手である玉やんがみつかります。玉やんは気持ちが優しく、おりんも安心した。
そしてやがて孫であるけさ吉にも嫁が決まり、辰平は大家族になった事もあり、当初は、山におりんを連れていく事に積極的でなかったが、おりんを山に連れていく辛い決断をすることとなります。
映画『楢山節考(ならやまぶしこう)』の解説
1958年度製作の日本映画です。監督は昭和時代の映画界を代表する監督である木下 惠介です。
主演は日本映画界を代表する田中絹代です。田中はこの映画でおりんが歯を抜く場面を演じるために、田中自らの歯を数本抜いてこの演技をおこなった有名な逸話が残っています。
また辰平役の高橋貞二も10キロ以上の減量を行いこの映画の役作りに挑んだという昭和時代の映画製作を成功させようとする強い熱意が伝わる作品といえます。
この作品の特徴としてほとんどの場面がセット内での撮影であるということです。このため極めて演劇舞台のような美しさが伝わってきます。
楢山節考は高く評価され、1958年度のキネマ旬報ベストテン第1位の作品に選ばれています。国際的な評価も高く、ヴェネツィア国際映画祭に出品された作品です。
映画『楢山節考(ならやまぶしこう)』のみどころ
映画のみどころは、一貫して演じて見せたおりんの自己犠牲の精神の強さです。貧困が行き過ぎると人はどこかで理性を失い恵まれた時代では、ありえない選択をしてしまいます。
自らが生き残るために相手の命までも結果的に奪う不条理を、自らの定めと冷静に受け止めどこまでも素直に村の定めに淡々と従う姿勢を見せる、おりんの演技は必見です。
映画の中でけさ吉が見せる配慮のない態度に対し、自らは素直に受け止め歯を抜いてしまう自己犠牲を示すシーンは田中絹代の演技力のすごさを感じこの映画の見どころといえます。
辰平が正月前に村の儀式を終えたおりんを背負い山に向かうシーンは親子の情をなぜ引き裂かなければいけないのかと思わず涙ぐんでしまうくらいの最大の見どころといえます。
映画『楢山節考(ならやまぶしこう)』の感想
現代では想像すらできない老人を山に連れていくという貧困がもたらした、悲しすぎる話です。
不変のテーマである親子の愛情をここまで引き裂かなければいけない時代があったのかと想像しただけでつらくなると共に今の時代に心から感謝できる映画であると感じました。
映画『楢山節考(ならやまぶしこう)』の登場人物・キャスト
映画『楢山節考(ならやまぶしこう)』の登場人物・キャストを紹介します。
おりん:田中絹代
辰平:高橋貞二
けさ吉:市川猿翁
玉やん:望月優子
けさ吉:市川猿翁(市川団子)
又やん:宮口精二
又やんの伜:伊藤雄之助
飛脚:東野英治郎
映画『楢山節考(ならやまぶしこう)』のスタッフ
映画『楢山節考(ならやまぶしこう)』のスタッフを紹介します。
監督:木下惠介
脚本:木下惠介(脚色)
原作:深沢七郎
製作:小梶正治
音楽:杵屋六左衛門,野沢松之輔
撮影:楠田浩之
編集:杉原よし