映画「エベレスト3D」は実話にもとづいた衝撃の作品

洋画

映画「エベレスト3D」(原題Everest)は1996年のエベレストの大量遭難事故を題材に2015年に制作されたアメリカ・イギリス映画です。

映画は実際の山中でのロケですので、山岳の厳しさが良く表現された、胸が痛くなるような作品です。この映画について解説していきます。

映画「エベレスト3D」のあらすじ

ニュージーランドの「アドベンチャー・コンサルタンツ(AC社)」はエベレスト登山に1人6万5千ドルで参加者を募ります。隊長は探検家のロブ・ホール(ジェイソン・クラーク)です。

ロブはAC社のオーナーになっており、エベレストには既に4回の実績があり、エベレストの商業登山にも成功していました。妻のジャン・アーノルドも医師であり登山家ですが、この時は身ごもっておりました。

このAC隊には様々な顧客が参加しています。ダグ・ハンセン(ジョン・ホークス)はアメリカ人で郵便配達などの仕事をして参加費用を捻出しています。最後には近所の子供たちから寄付を募ってまでしており、前回は頂上直前で引き返していることから、今回はなんとしても登頂したいと考えているのです。

ベック・ウェザーズ(ジョジュ・ブローリン)は医者であり、相当裕福な感じの顧客です。アメリカには妻のピーチ・ウエザーズ(ロビン・ライト)、娘のメグ、息子のバブが残されています。

難波康子(森尚子)はこれまで七大陸最高峰の登頂を目指しており、既に六峰は登頂済みで、今回のエベレスト登頂によって七大陸最高峰の登頂が完了するのです。

同じような商業登山隊としてはマウンテン・マッドネス(MM)隊というものがあります。その他に同時期に登頂を目指す隊としては、南アフリカ隊、台湾隊などがありました。

そのどのチームも最も条件の良い5月10日の登頂を目指すことになったのです。ロブは各隊に調整を働きかけますが、なかなか調整はつかずに、結局は時間切れとなってしまうのです。

この調整がスムーズに進まないことは、高地登山では致命傷になってしまいます。待っている間に酸素を使い切ってしまうことになり、体力も急速に消耗することになるのです。

登山者たちは標高5100mのベースキャンプから第一キャンプ、第二キャンプ、第三キャンプ、第四キャンプを経て、体を慣らして登頂することになっています。最低限の慣らしは行われたようですが、そこは商業登山の限界があり、参加者すべてが自力で頂上まで行って帰ってくるのは大変困難な状況だったようです。

商業登山を成功させるためには、あらかじめルートの危険なところにロープを張って登頂を容易にしたり、酸素ボンベをあらかじめ各所に配置して、慣れない登山者が何とか登頂できるように事前準備をしておくことになっていました。

ところが、当日までルートのにロープが張られていないところが2か所見つかってしまい、このロープを設定するのに都合2時間のロスが発生することになるのです。

5月10日の朝はとても素晴らしいものでした。しかしながら、安全のため午後2時には頂上を目前にしても変えるという条件で、彼らは出発するのです。

しかし彼らを待ち構えていたのは、登山道の渋滞、ロープ設置のための2時間のロス、急速な天候の変化です。これによって前代未聞の大量遭難の発生につながるのです。

映画「エベレスト3D」の見どころと感想

まずはエベレストでの圧倒的な自然の美しさと、山岳の恐怖です。どこまでも深いクレバスを見ていると吸い込まれそうな気分になります。そして、人間を圧倒する自然の力です。

人間の文明の利器もこの自然の猛威には全く無力であり。以下に現代科学の装備を備えたとしても、自力で上り下りするにはあまりにも過酷な条件であることがわかります。

商業登山の限界

こんな状況の中で、商業登山というジャンルが開かれるわけですが、スペースシャトルに乗って宇宙に出かける方が遥かに容易ではないでしょうか。

ある程度人間が文明の利器に守られた状態であれば問題ないのですが、ヒマラヤは人間そのものを守るものもなく、ある程度のおぜん立てされているとはいえ、最後に頼るのは人力と体力になることが大きな違いと考えられます。

観光地化したベースキャンプ

標高5000mのベースキャンプは確かに高地で、テント村を形成しているのですが、参加者は毎晩酒を飲んで懇談している状況です。

こんなことでは、山岳に対する真摯な気持ちが出てこないのではないでしょうか。確かに通信機器は一通りそろっていますが、あまりにも世俗化したベースキャンプの状況は暗澹とさせられます。

映画「エベレスト3D」は実話にもとづいた衝撃の作品のまとめ

映画「エベレスト3D」の導入部分のあらすじと、この映画を見て商業登山に関する感想を述べておきました。詳細は映画を見て判断していただければ幸いです。

この映画の主人公はロブ・ホールですが、彼は隊のリーダーでもあるため、隊員の安全確保に尽くしますが、やはり商業登山の限界か午後2時をはるかに過ぎるまで頂上に留まることになるのです。

その後の状況は映画の中で詳細に描かれるでしょうが、とても残念です。傑出した登山家であっても、人の命を守りながら、自分を救うことはいかに困難かということです。

最後に、感心したのは、日本では想像がつかないのですが、ヘリコプターでも5000mを超えると飛行することができなくなるため、日本で考えるような山岳救助の方法がヒマラヤにおいてはいかに無力化がわかります。